やわらかな「へ」を使いこなす30代女子と「やわらかいブラウザ」の話。

「へ」といっても、臭いのするアレの話ではない。ちょっとしたやわらかさが印象を変える、という話*1

やわらかな「へ」を使いこなす30代女子

ちょっとここで、やわらかな印象を与える表現を使っている女性の例を二つほど出してみたい。


昨夜は3時間くらいしか睡眠とれず、
朝、東京戻って、
そのまま用事やら仕事やらをつぎつぎこなしていたら
さすがに夜からへろへろになってきて
今はもう、へろりんこ。

すみきちさんは某放送局で働いている30代女子の人*2

「へろりんこ」の「へろ」は「へろへろ」の「へろ」、「りん」はあだ名などでよく使う表現、「こ」は女子の「子」をひらがなで書いたと受け取れる。「りんこ」部分は状況を擬音で表現しているともとることができるが、こうやって見ると上手い表現だなと思う。疲れた女子がへたり込んでしまう状況、というのがこれだけで伝わる。

もう一つのやわらかい表現は某ふぉくすけがいるうえぶぶらうざーな会社で働いている忍者な30代女子の人*3の発言。


風:お疲れ様です<会議

忍:いへいへ。

こちらは謙遜する場面などで使う「いえいえ」の「え」を「へ」に置き換えて「いへいへ」とした表現。「いえいえ」だと場面によっては何となく硬く感じられることがあるが、「へ」と音が抜ける感じがして力が抜けてやわらかい印象になっている。どうやら相手の緊張感を解きたい時に使われているようだ。

こういった表現は厳密な日本語としては正しくないのかもしれないが、言葉をやわらかい印象にする表現としてはわかりやすいし、どちらもとても上手く使っている。

もちろんいずれの表現も場面を選ぶのは確かだが、どちらも使う場面を上手に選んでいるといえるだろう。

蛇足だが、いずれも本人はやわらかい印象だけど実は結構タフな30代女子、というところがまた面白い*4。もしかしたら普段はタフでいようとするからこそ、場面によっては表現もやわらかさが必要、なのかもしれない*5

やわらかいブラウザ

ところで、タイトルの中で出てきた「やわらかいブラウザ」って何だろうか。

ブラウザに「へ」がついているから「やわらかい」というわけではない。

ブラウザにも「へ」のようなやわらかい力が必要なのではないか、ということである。

ブラウザ上の「へ」は上述のような単語表現であったり、機能の実装自体であったり、あるいはコミュニティのやさしさであったりする。つまりユーザーがブラウザから感じるやわらかさとはブラウザを通して感じる使いやすさのことである。

ここで表現や実装といったのには理由がある。どちらかだけがやわらかくても、ユーザーにとっては硬いものになってしまうからだ。例えばヘルプやメニューの単語が判りづらいとそれだけで使い勝手は悪くなる。同様に実装がタコでも使い勝手は悪くなる。

ブラウザ上の表現や実装が悪いと、使いにくいものだという印象をユーザーに与えるため、余計な力を使わせてしまう。逆に、表現や実装がよいブラウザは使いやすいものだという印象をユーザーに与えるので、余計な力を使わず楽に使える。

その意味で言うと、Piroさんの書かれた記事で出てくる、


人にやさしいインターフェイス万歳!

はユーザーにとってまさしく真である。

つまり「人にやさしいインターフェイス」=「へ」なのである(おいおい…)。

Firefoxのやわらかさ

さて、Firefoxにおいてのやわらかさとは何だろうか?

Firefoxのメニューは割とよくできていて、初心者でもわかりやすいよう配慮がなされている。機能も同様で、細かくしすぎず初期状態ではシンプルに使えるようになっている。これらの配慮はユーザーに対してやわらかい印象をあたえる。

またブラウザの表現や機能の実装に加えて、Firefoxのやわらかさには拡張機能がある。自分のほしい機能を選んで追加できるのだから、ユーザーにとってはこれ以上やわらかいものはないだろう。

Firefoxを使う上で拡張機能は使いやすさを向上させる手段として有効なものだ。ただ、TakenさんのいうFirefox の非人間的なところでいわれているような問題もあるにはあるが*6、それを上回るだけの長所が拡張機能にはある。それは自分のほしい機能だけを追加できるということである。

またブラウザ開発者に泣きついてブラウザ自体に機能追加してもらうより、自分のほしい機能を拡張機能の中から探してくることのほうが、ユーザーにとってはやはり楽だろう。開発者のコミュニティに意見を投げるというのは一般ユーザーにとってはそれだけ敷居の高いことなのだから。

「機能を詰め込みすぎたブラウザ」は「機能が少し足りないが、機能を足すことができるブラウザ」よりも非人間的だと思う。機能を詰め込みすぎたブラウザでは、余分な機能を削った状態をまず選択できないからだ。機能を詰め込みすぎれば、わかり難い表現*7や多すぎてよくわからない機能に面食らうことになる。

「へ」という言葉と同様、ブラウザにも場面に合わせた選択が必要だ。

万人にとってやわらかなブラウザで在ろうとするがゆえに、部分的にはあえて非人間的な部分を残す、そんな選択をしたのがFirefoxなのではないだろうか。

やわらかさの一つ一つはちょっとづつだけど、「やわらかい〜」を大事にしていきたいと思うがゆえにできたブラウザがFirefox、といえるかもしれない*8

*1:本記事は2007年に記述したものに、最近一部書き加えたもの。

*2:普段はキャリアウーマンな人を女史と表記するが、今回は表現上の都合から女子とする。

*3:普段からこのブログに来る人ならば多分想像がつく人。

*4:でも、お二方とも十分な睡眠は必要ですよぉ…。

*5:こんな理屈っぽい説明なんぞ読まなくても、「やわらかな表現っていいよね」が通じればそれでOKだったりするわけだけど。

*6:アドオンの衝突についてはmozilla add-onで衝突についての管理ができればよいのかもしれない(気が遠くなる話ではあるが)。

*7:機能の数がが増えれば、それだけわかり難い表現も混ざりやすくなる。

*8:蛇足だが、こどもじらや池田さんが考えられたフォクすけブラウザ for Kidsもこういった「やわらかい〜」に対する感覚が頭にあったからこそ出てきたアイデアなんじゃないだろうか、という気がする。