ブラウザ戦争2.0から見える未来。

突然だが、かつて「ブラウザ戦争」という言葉があったことをご存知だろうか?


ブラウザ戦争とは、ブラウザ同士の激しいシェア争いのことを指すことばで、大まかには「Internet Explorer」対「その他のブラウザ」の争いを指す。以前は1990年代の「Internet Explorer」対「Netscape Navigator」のシェア争いを指すことが多かったが、この戦いはInternet Explorer側の圧倒的勝利で終了した為、最近ではこれを第一次ブラウザ戦争と呼ぶようになっている。それに対して、その後起こった(今も続いている)IE7 VS Firefox or Opera or Safariの戦いを第二次ブラウザ戦争と呼ぶ。が、ここではWeb2.0にならい、あえてブラウザ戦争2.0と呼んでみようと思う。


まず、ブラウザ戦争2.0としたのは他の分野においての世代間競争との比較が必要だからでもある。例えばWeb2.0もそうだが、Web検索エンジンの世界においても世代が存在する。Yahoo!ディレクトリに代表される手動による登録が必要な世代を1.0とするなら、GoogleのようにPageRankという概念を持ち込み自動的に評価される仕組みを持つ世代が検索エンジン2.0と言えるだろう。現在はYahoo!なども同様の仕組みを備えているので、現在の検索エンジン戦争は2.0時代といってよい。


その検索エンジン戦争2.0の強い影響を受けているのが、ほかならぬブラウザ戦争2.0である。ブラウザ戦争2.0には、第二世代検索エンジンの代理戦争という側面があるからだ。


GoogleInternet Explorer 7に標準装備される検索窓について、デフォルト表示される検索エンジンがMSNであることに抗議していたのは記憶に新しい。あれも結局はブラウザに搭載される検索窓が検索エンジンへの入口となるからである。


GoogleFirefoxOperaに肩入れするのも、IE7の検索窓がブラウザシェアに与える影響をよく理解しているからであり、てこ入れしなければGoogle自体の存亡が危うくなるからでもある。かつての検索エンジン戦争1.0世代の検索エンジンがブラウザ戦争1.0世代のブラウザ上で初期表示されるポータルサイトとしての利権を争ったように、ブラウザ戦争2.0時代のブラウザは検索エンジン2.0にとってのプラットフォームであり、そこに表示される検索窓が検索エンジン戦争2.0世代の勝敗を決する決め手になる。


とはいえ、かつて圧倒的なシェアを誇ったNetscapeが磐石ではなかったように、Googleもまた磐石ではない。同様に、Internet Explorer 7.0もまた磐石ではない。GoogleIE7が崩壊する日が来ないとは誰にもいえない。ブラウザで使われるのは検索エンジンだけではなく、アプリケーションそのものがWeb上で提供され始めているからだ。


第一世代のアプリケーション機能にとってプラットフォームはOSであったように、第二世代のアプリケーション機能にとってプラットフォームはWebそのものである。このことはOS依存からの脱却を意味しており、同時にブラウザに依存しないWeb2.0世界が実現すればブラウザ依存のWebアプリケーションからも脱却する事ができることを意味している。


アプリケーションのプラットフォームがWebに移れば、もはやユーザーはOSやブラウザに固執することなく環境を使いこなす事ができる。


ネットワークそのものがプラットフォームになる世界がもうすぐやってくるのだ。Web標準とはその世界を実現するための一方策でもあり、基礎打ち方法でもあるのだ。だからこそWebブラウザはWeb標準をサポートし、Web標準を実現しようとしているのだ。


無論、Webブラウザがそれを拒めば実現は遅れるだろう。だが、ユーザーが望めばそれはやって来る。ユーザー自身が望んで作られ始めたオープンソースソフトウェアのように。