Firefoxの初期登録フィードを見直すべき3つの理由
Firefoxでは初期登録フィード*1が特定の一社だけだが、これはそろそろ見直すべきだろう。フィードが特定一社だけというのはデメリットが大きすぎるからだ。
デメリットの主な理由としては、Firefox登場の頃と現状との違い、ユーザーがフィードのメリットを理解するまでのプロセス、さらには初期登録のフィードを特定新聞社に限ることで発生するイデオロギーアレルギーの影響、の3つがある*2。
Firefox 1.0登場当時と現在の、ニュースサイトにおけるフィードサービス状況の違い
Firefoxの場合、初期設定ではブックマークツールバー上にasahi.comのフィードが登録済になっている。
asahi.comのみがFirefoxのブックマークツールバーに登録されている理由としては、Firefox 1.0が公開された当時*3は大手だとasahi.com位しかフィード配信をしていなかった*4ために採用されたと記憶している(Mozilla Japanがasahi.comを採用した理由についてはニュースソースが見つからなかったので、思い込みかもしれないが)。もっとも、フィード配信は当時とは大きく状況が変わってきており、多くのニュースサイトではフィード配信を行うようになってきている。
例えば、テレビであればNHKニュース(*5,*6,*7)・日本テレビ(*8,*9)、TBS(*10,*11)・フジテレビ(*12,*13)はニュース動画のフィードを配信しているし*14、asahi.com(朝日新聞)以外の新聞社系では毎日新聞(*15,*16)や産経新聞(*17,*18,*19,*20)が*21、スポーツ新聞系では日刊スポーツ(*22,*23)が、夕刊紙では夕刊フジ*24などがフィードの配信を行っている。また国内系ではないがロイター*25などでもニュースのフィードを配信している。
雑誌社のニュースサイトとしては、技術系ではインプレス*26、ソフトバンク(*27,*28,*29,*30)、毎日コミュニケーションズ*31、日経BP*32、ASCII*33などが、スポーツ関係ではNumberWeb*34などがフィードの配信を行っている。
他にもリクルート(*35,*36)、All About*37、Japan.internet.com*38、薬事日報*39、など、名の知れたところだけでもかなりのサイトがフィード配信するようになってきている。
このように、現在では多くの著名なニュースサイトでフィードが配信されるようになっているが、Firefoxではasahi.comのみ初期登録されるため、ブックマークツールバー上ではasahi.comのフィードを優遇する状況になってしまっている*40。
ライトユーザーはフィードの存在を理解しているか?
ところで、Firefoxを使うライトユーザー(いわゆる初心者層)にとって、フィードとはどんなものなのだろうか?
Firefoxを使い始めたばかりのライトユーザーはフィードの概念を理解していない上に、自分で登録できるということを理解してないことが多い。人に説明を受けているなり説明書きを読むなりしていなければ、知らないのが普通だろう。
それゆえ、ライトユーザーが使用するFirefoxにはフィードが追加されてないことが多い。フィードの概念も理解していないしメリットも知らないので登録することを思いつかない。従って、ブックマークツールバー上のフィードアイコンはライトユーザーにとって単なるブックマークとして認識される可能性が高い。
何でもクリックするタイプのユーザーならクリックする事で利点に気が付く可能性は高い。逆に知らないものはいじらないタイプのユーザーでは、利点に気が付かない可能性がある。仮にフィードが単なるブックマークと認識された場合、自分の好みでないブックマークはユーザーにとって無駄以外の何者でもない(興味がないブックマークはクリックされない)ため、結果的にフィードは放置されてしまう。よって、追加登録もされないままになる。
実際ブログやmixiなどでも、他人にフィード機能について指摘されるまでフィードを追加できるということに全く気が付いていなかったという例が見られる(特にシニア層にこの傾向が強い)。
イデオロギーアレルギーがフィードの放置を生み出す?
新聞の場合、イデオロギーの違いにより各紙の主張が大きく異なるため、たとえ同じ新聞であっても人によって好き嫌いが起こりやすい。であるにもかかわらず、特定の新聞だけフィードを表示するのでは無駄にイデオロギー的なものを感じさせる事になってしまう。仮にフィードの存在や概念を理解していても、嫌いな新聞社であればその時点で削除対象となってしまう。結果的に機能を使ってもらえないことになる。
結果として、ユーザーはフィードの概念やメリットを理解する前にasahi.comのフィードをブックマークツールバーから削除してしまい、他のフィードは何も登録されないという事すら起こり得るはずだ。フィードの概念やメリット、さらには登録方法を理解するまでには時間がかかる事を考えれば、好みでないフィードしかないという状況は絶対に避けるべきだろう。
Firefoxユーザーが増えるという事は特定のイデオロギーとは異なるイデオロギーを主張するユーザーも増えるという事でもある。そのようなユーザーから見れば、特定1社だけ登録されているというのは不愉快な場合がある。Firefoxがイデオロギーを主張していると受け取られる場合もある。したがって、ユーザーが増えるほど特定1社のフィードだけ表示するような初期設定は改善する必要が出てくる。
ブックマークツールバーの初期登録フィードはどう改善すべきか?
ブックマークツールバー上にユーザーの好みに合うフィードが表示されているのであればユーザーはフィードを利用するだろうし、何度かフィードを利用するうちにそのメリットも理解するようになる。好みのフィードが初期設定に存在しているかどうかがフィードの利用率をあげる上で重要になる。このようにフィードのメリットを理解してらうには最低でも各ユーザーの好みに合ったフィードが必要となる。
では、どのようにしてフィードの初期登録の設定を改善すべきだろうか?
1.ブックマークツールバーに複数のフィードを初期登録しておく
ブックマークツールバー上にあらかじめ複数のフィードを登録しておく方法。技術的には一番簡単だが、ある程度フィードの絞込みをMozilla側で前もって行っておく必要がある、数が多すぎるとブックマークツールバーが雑然とする・起動時フィード読み込みに時間がかかりすぎる、といった欠点がある。
2.フィード紹介ページのブックマークをブックマークツールバーに搭載する
あらかじめMozilla Japanがフィード紹介ページを作成しておきブックマークツールバーにページのブックマークを登録するという方法。ブックマークツールバーのブックマークさえクリックしてもらえればフィードの説明ページを見てもらうことができる。ページとブックマークの編集をしておけばよいが、Mozillaのサーバに負担がかかる・オフラインの環境では説明ページを参照してもらう事が出来ない、ブックマークをクリックしないと説明ページを見てもらえない、といった欠点がある。
3.インストール時フィード選択制の導入
インストール時に何種類かのフィードから登録するフィードを選択できるようにする方法。インストール時にユーザーが自分で好みのフィードを選べることで、選択されたフィードのみを起動時のブックマークツールバー上に表示する事ができる。ユーザビリティ面でもユーザーの意思で選択したことが分かりやすい、フィードの説明をインストール時の専用画面で行えるのでフィードへの理解が進みやすい、といったメリットがある。特に視野が狭くなりがちなシニア層には特に有効なアプローチとなる*41。技術的にはプログラムを追加する必要があるので、プログラムサイズが増加する、プログラムの動作が重くなる恐れがある、開発コミュニティへの負担が増す、といった欠点がある。
1と2の方法はMozilla Japanがローカライズ化を行う中でカスタムすることが可能だが、3の方法については本家の開発コミュニティがOKを出さない限りは実現しないだろう。
いずれにしても、これだけ多数のフィードが配信されるようになっている事を考えると、ツールバーの初期状態に一つのフィードだけ登録する手法ではデメリットの方が大きい。テレビのニュースや新聞社系のフィードが増えてきた状況に合わせて、Mozilla Japanはブックマークツールバーの初期設定を見直す時期に来ているように思う。
おまけ
ニュースによると海外では新聞社サイトの利用者増加率がネット利用者増加率よりも高い*42といった動きがあるようだ。単なる思いつきだが、フィード提供者側がGoogle AdSenseのような仕組みを用意していれば、Mozillaが初期登録フィードから利益をあげるのも可能なのではないか。もっとも既にGoogle AdSenseが掲載されていて、もう利益をあげているのかもしれないし、単にMozillaの主義に合わないと見なされて機能追加されていないだけなのかもしれない。
*1:Firefoxではライブブックマークと呼ばれる機能を利用(Mozilla Japan - Firefox サポート - チュートリアル - Web フィードの購読)。
*2:例によってまた3つの方法を採用:FPN-文章をスムーズに書くための3つのポイント
*3:マイコミジャーナル 2004/11/09:Firefox 1.0正式版、ついにリリース | パソコン | マイコミジャーナル
*4:ITMedia News 2004/03/01:ITmediaニュース:asahi.comが見出しRSS/RDF配信を開始、大手ニュースサイト初
*6:Internet Watch 2005/03/25:NHKオンライン、3月28日のリニューアルに伴いRSS配信を試験的に開始
*11:TBS会社情報 ニュースリリース:2005年02月01日:TBS・NewsiのRSS/RDFを公開します
*13:www.fnn-news.com RSS Channels
*14:TV朝日やTV東京のニュース番組では見当たらなかった
*19:FujiSankei Business i. on the Web
*20:FujiSankei Business i. RSSの配信について
*21:読売新聞では見当たらず、日経新聞では日経ネットナビしか見当たらなかった
*23:RSSについて : nikkansports.com
*26:INTERNET Watch、PC Watchなど多数
*32:nikkei BPnetなど多数
*38:Japan.internet.com 最新インターネットニュース
*40:もちろん、フィードを配信しているニュースサイトのうちいくつかはMozilla Japanでもウェブページ上で紹介されている (Mozilla Japan - Firefox サポート - チュートリアル - Web フィードの購読)。とはいえ、個別のフィード紹介ページの存在を調べてわざわざアクセスするユーザーがどれ位いるか?を考えると、フィード機能の紹介として有効な手段とはいえないだろう。
*41:Mozilla Firefox Thunderbird の拡張あれこれ-MEMO(2007年5月その2):Mitchell Baker のインタビュー(1)で触れられているように、Firefox自体がシニア層も考慮した製品であることを考えると、採用される可能性はあると思う。