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Netscapeが開発サポート停止しても推奨環境を一つのブラウザにしてはいけない理由

browser netscape firefox

既に数年前から過去のブラウザと化していたNetscapeだが、開発サポートが停止となるとその影響は広範囲にわたる。特にNetscapeを推奨環境に記載する銀行などのWebサイトや、自団体内でNetscapeを団体構成員に利用させてきた企業や大学などの教育機関では早急な対応を迫られるものと思われる(大学などは春休みに乗換か)。

Netscapeを推奨していた(使っていた)Webサイトや団体の選択は以下の三つ。

おそらく一つ目と二つ目の選択が多数派になると思われるが、IESafariへの乗り換えは「代替手段の明示または提供」という視点が抜け落ちている点で危険だ。三つ目の選択はマイナーあるいはサポートや使い勝手の点で避けられる可能性が高い。

とすると、Webサイトや団体は二つ目のFirefoxやThunderbridに乗り換えるという選択をとることになる。この選択にはいくつかの利点がある。

Netscapeを推奨ブラウザとしてきたWebサイトにとっての利点

  • Netscape対応コンテンツであれば、多少の手直しでそのままFirefox対応にできる
    • レンタリングエンジンが同じGecko系であるため
    • もともとWeb標準に準拠したコンテンツであれば問題ない(ことが多い)
  • 代替手段を明示・提供することにより、リスクの分散が図れる
    • IESafariなどにトラブルや不具合が発生した場合の代替手段としても使える
  • セキュリティ・使い勝手の向上が図れる
  • (現状がFirefox未対応の場合)既存のFirefoxユーザーを取り込むことができる
    • 現在のブラウザシェアはNetscapeが1%以下、Firefoxが10%程度(国内)
    • Firefoxユーザーは現在も増加している

Netscapeユーザーを抱える企業団体にとっての利点

以下、銀行などのWebサイトのほか、企業や教育機関での利用を例にFirefox(+Thunderbird)に乗り換えることの利点を説明してみる(過去に述べていることと重複する部分も多いが、その点は初めて文章を読んだ方向けの説明と思ってご容赦願いたい)。

推奨環境にNetscapeを掲げる銀行などの場合

Netscape をいつまでサポートするの - A blog? with Σαιτωなどでも触れられているように、銀行などではいまだにNetscapeを推奨としているところが多い。今回のサポート完全終了によって、推奨環境をNetscapeからFirefoxに移行するところが相当数現れるものと思われる。また、推奨環境にFirefoxを明記する銀行が急激に増えている理由で触れたように地方銀行特定のベンダーにシステムを依存している状況を考えると、仮に移行するのであればNetscapeからFirefoxへの移行は一斉に行われると考えたほうがよい。

Netscapeで使えるサイトはサイト側でFirefoxを排除していない限りFirefoxで利用できるサイトであることが多い(排除しているサイトでもブラウザのユーザーエージェントをNetscapeのものに書き換えると問題なく利用できることが多い)ので、そういったサイトではシステム側の負担もさほど増えずに推奨環境を変更することが可能だろう(とはいえ詳細な動作テストは必要だろうが、水面下で既に行っているところも多いはず)。

サポートが切れたOSを推奨環境からはずしている銀行が増えてきていることを考えると、Netscapeも2008年2月1日以降は推奨環境から次々と外され、代わりにFirefoxが推奨環境に掲載されることになるだろう。また、それすらしないような銀行は使うべきではない、ということになる。

ところでなぜ推奨環境のNetscapeFirefoxに替わらない銀行は使うべきではないのか?詳細は後述するが、リスクマネージメントの観点から見るとIESafari以外の推奨環境を明記しないような銀行はリスク分散に対する意識が低いと思われるからだ。

Netscapeをユーザーに使わせている教育機関や企業は?

NetscapeユーザーがWebブラウザを乗り換えた方がよい10の理由は日本語環境限定の話だったが、今回は言語に関係なく完全に乗り換えなければならない。今まではWebサイトがNetscapeに対応していたが、Netscapeのサポート停止をきっかけにWebサイトのNetscape対応も止まれば、他のブラウザへの乗り換えに迫られる。Netscapeユーザーにとっては有無を言わさぬ状況である。これはNetscapeをユーザーに使わせてきた教育機関や企業なども同様である。

教育機関や企業団体の場合、グループウェアeラーニングシステムなどをユーザー向けサービスとして団体内で提供している場合も多い。ユーザー向けサービスをNetscape上で使ってきたなら、そのままFirefoxで利用できる可能性は高い。その視点で考えた場合、企業内・学内においてNetscapeからFirefoxへのリプレースは障害が少ない部類に入る。

また、ユーザーが作成したブックマークやメールデータなども、FirefoxThunderbirdであれば容易に自動コンバートすることができる。操作画面を見ても違和感が少ないというメリットもFirefoxにリプレースする後押しとなる。

Firefox+Thuderbirdの場合、ブラウザとメールソフトが別ソフトとなることで、一方のソフトが落ちた場合にもう一方のソフトも巻き込まれることが無くなるという利点もある*1

唯一懸念する材料があるとすれば、WYSIWYGのHTML編集ツールであるNetscape Composerの機能を利用している場合だ。Composerの後継に近いソフトとしてはNvuがあるが、日本語化されていないことなどもあり、少々お勧めしづらい。WYSIWYGでのHTML編集にこだわるのであれば別のソフトに乗り換えたほうがよいだろう。なおWYSIWYGのHTML編集ソフトについてはWeb標準を考慮しないHTMLを吐き出すようなものもあるので注意が必要だ*2WYSIWYGにこだわらないのであれば、拡張機能Web Developer*3,*4Firebug*5などをFirefoxで利用するのがよいだろう。HTMLやCSSJavaScriptなどのソース書き換え内容をリアルタイムで確認したい場合、これらの拡張機能は非常に便利だ。

代替手段とリスク分散

IE利用者が多い環境の場合、その状況だけを見て「IEへの対応で十分では?」という意見がよく出てくるがそれは正しくない。セカンドブラウザが必要な理由。でも述べたように、一つのOSに一系統のブラウザとするのはユーザーから代替手段を奪うことにつながる上に、Webサービス提供側にとっても非常時に代替手段を提供できなくなるリスクが高くなる。これはユーザー・サービス提供の両者にとって非常に危険なことだ。

IE7登場時にIE7が使えずFirefoxを代替手段として推奨したサイトが多かったのは記憶に新しい。Webサービス提供側が一つのOSについて最低でも複数の異なる系統のブラウザに対応をしていなければ、あのような手段は取れなかったのではないだろうか。このことは一つのOSごとに複数の異なる系統のブラウザに対応することがWebサービス提供側の身を守ることにつながることの証明といえる。

2008年2月13日にはWindows XPユーザー向けにIE7の自動配信が始まる*6が、現状でまだIE7に対応してないようなサービスの場合、Netscape対応サービスをFirefox対応に変更しておければ代替手段として明示することも可能だろう。

Web標準に準拠したサービスならさらにリスク分散につながる。Web標準への対応が進む中でのIE特化はかしこいとはいえない。システムリプレースが行いにくくなるからだ。Webサイトに限らず、企業内のイントラネット向けシステムや大学の教育システムなども、Web標準を考慮したものを選択していくことでより多様な利用環境で使えるようになる。また特定ブラウザに依存しない分だけ個々のシステムリプレースも行いやすくなるだろう。結果的に、ベンダーロックオン(囲い込み)のリスクを減らすことになる。

既存Firefoxユーザーの取り込み

Netscapeを推奨環境に掲載しつつFirefoxに対応してこなかったWebサイト、特にユーザーエージェントでブラウザを振り分けるサイトの場合、相当のユーザーを取り込み損ねたと考えた方がよい。多くのユーザーは使えないとなればそのままサイトを立ち去ってしまう。同一IPアドレスから別ブラウザで再アクセスした数と再アクセスせず立ち去った数を比較すれば、結構な数のユーザーがそのまま去ってしまっていることに気がつくはずだ。

ユーザー数において、FirefoxNetscapeを逆転したのはずいぶんと前のことになるが、今では圧倒的にFirefoxユーザーのほうが数が多い。これを取り込まない手は無いだろう。Netscapeを推奨環境から外すだけではなく、Firefoxに対応することで今まで切り捨てていた潜在ユーザーをWebサイトが取り込む方が商売上よい影響があるのではないだろうか。

ところでOperaは?

ちなみに、Operaは自動アップデート機能を付けない限り対応サイトは微増にとどまると思われる*7。現状では自動アップデートによるセキュリティフィックスの自動提供が前提となる場合が増えていると思われるからだ。現行版のOperaのようにアップデート通知機能のみでは心もとない。シェア間のバランスをよい状態にするという意味でも、Operaでもそろそろ自動アップデート機能を装備すべきではないだろうか。

*1:無論精神衛生上は落ちないのが一番いいわけだが、どんなソフトでも可能性はゼロではない以上巻き込まれないに越したことはない(2008年1月9日追記:FirefoxThunderbirdは安定性において優秀な部類に入るソフトウェアである)。

*2:参考:国内20万サイトのWebブラウザ互換性を調査,172種もの非互換要因を発見:OSSセンター談話室:ITpro

*3:日本語版:Web Developer 1.1.2 日本語版/ツール&ダウンロード − 『infoaxia(インフォアクシア)』

*4:英語版:Web Developer :: Firefox Add-ons

*5:Firebug :: Firefox Add-ons

*6:IE7日本語版、自動更新による配布は2008年2月13日:ITpro

*7:ここでいっている対応サイトとは銀行系のこと。